どの婚姻書類の翻訳を提出するべき?
「婚姻証明書」(結婚証明書、Marriage Certificate)とその翻訳を提出するように提出先の外国の機関から指示を受け、いざ書類を入手しようとすると、はたと困ってしまうことがあります。例えばアメリカなどキリスト教が主な宗教になっている国では、結婚の儀式はキリスト教の司祭の前で執り行ない、司祭が2人の婚姻の約束を目撃して婚姻したことの証明(Marriage Certificate)を発行するのでしょう。日本は、政治と宗教の区分を憲法にもうたっており、結婚は宗教では成立しません。日本の婚姻の要件は役所への「婚姻届」の提出とその「受理」となります。従って、例えばアメリカの移民局の人が期待しているような「Mariage Certificate」は、日本には存在しないことになります。そこで、2人が婚姻したことを証明するいわゆるマリッジサーティフィケートは日本では何が該当するでしょうか。婚姻届、婚姻届受理証明書、戸籍届書記載事項証明書の違いの違いを説明します。
婚姻届受理証明書
婚姻の証明として翻訳を依頼されることが一番多いのは、「婚姻届受理証明書」です。
結婚した人が届けた婚姻届を市役所等で受理しますが、この受理したことについて市長や区長が「確かにこの2人の婚姻届を受理しました」という認証をしたものです。
戸籍届書記載事項証明書
次に多いのが、「戸籍届書記載事項証明書」です。
これは、基本的に本人が記入した婚姻届の「写し」です。ただし、写しといってもただのコピーではなく、届けられた婚姻届の写しに、受理印と「この婚姻届の写しは戸籍の記載事項に間違いない」という旨の市長等の認証文が加えられています。この書類は婚姻の届け出とその受理について全ての情報が記載されていますので、この書類とその翻訳があれば万全と思われますが、下記に述べるように入手しにくいという側面があるようです。
戸籍謄本
「戸籍謄本」を婚姻証明として提出される方もいらっしゃいます。
上記の戸籍届書事項の結論が戸籍の婚姻の欄に記載されるため、戸籍謄本には婚姻の事実が記載されます。また戸籍謄本は出生や死亡の証明書として使われる場合もあります。そのため戸籍謄本は翻訳依頼のもっとも多い書類です。ただし、戸籍謄本は「改製」されることがたびたびあり、改製のときに割愛される情報があるので、注意が必要です。戸籍謄本の翻訳は本サイトの別ページ「戸籍謄本の翻訳」のページを参照してください。
婚姻届の写しそのもの(戸籍届書記載事項証明書でなく、役所に届けを出す前の状態のもの)の翻訳を依頼される方もたまにいらっしゃいます。しかし届けの用紙は自由に入手でき、記載も自由なので、これはなんらの証明にもなりません。上記のように婚姻は役所への届け出とその受理によって成立しますので、役所に届けを出す前の状態では証明書にはなりません。婚姻届けの写しの翻訳を提出したい方は、役所等から入手した、届け出の事実が記載された戸籍届書記載事項証明書(婚姻)を使用すべきでしょう。なお、戸籍届書記載事項証明書は一定期間を経過したあとは本籍地の住所を所管する法務局に移され、請求先、交付は法務局に移ります。