インド定款の翻訳(和訳)

投稿者: | 2016年6月10日

インドの定款の翻訳
早いもので僕がサラリーマンを卒業して12年が過ぎました。そのあと少しばかりの寄り道をしたあと翻訳者になったわけですから僕の産業翻訳者のキャリアもおよそ10年になります。光陰矢のごとし。その間ほぼ全面的にフルタイムで職業としての翻訳者をやっているわけですからかなりの量の日英、英日の翻訳をしたことになります。エアラインのパイロットの「飛行時間何万時間」みたいなログ記録が翻訳者にもあるとすれば、1か月300時間として1年で3600時間、10年で3万6千時間!!

さて、このくらいの飛行時間、いえ翻訳時間をもってしても一筋縄ではいかん翻訳がインドの会社定款の和訳です。これはいきません。何が難しいかというと、まずは文章がとてつもなく長い。1センテンスが平気で1ページ続いたりする。インドの法律家の方たちは、未だに、長い文書を書けるほどインテリと思いこんでいるふしがある。次に、誤字、誤植、語用法、誤シンタクス、とにかく誤○○が多い(すべての会社の定款がというわけではありませんが)。かなり謎解きしながら意味をくみとらなければならないことがあります。

インドの定款を翻訳したことがない翻訳者の方は、「そりゃ、うそやろ」と思うかもしれません。致し方ありません。翻訳者の技のひとつはソース言語の意味を寸分たがえることなく理解することですが、翻訳者のその技量のテストをするのにはインドの定款を読ませるのがよろしいでしょう。

ところで、日本の会社の定款などは、公開株式会社であるか有限会社であるかなど会社の種類によってパターンはかなり異なりますが、同一の種類の会社であればいずれの会社もほとんど同じようなものです。会社の目的はもちろん固有のものですが、それでも会社の目的が1ページを超えるような会社の定款はほとんどありません。従って日本の会社の定款を翻訳するのは馴れるとかなり早くできるようになります。

インドの会社法(1956年インド会社法です)は、モデル定款みたいなものが準備されていて日本人の感覚であればそれこそそのモデル定款をそのまままねてなるべく余計な変更はせず公証人に認証してもらい極力つつがなく会社の登記を済ませてもらいましょ、と思うだろうと想像しますが、インドの会社の定款はなかなかどうして会社ごとに意固地に内容が異なり、会社の目的だけでびっしりの文章で数ページにも渡ったりします。翻訳メモリーであるトラドスをかけても少しも訳出してくれません。

それでインドの定款の翻訳はしんどい。。。。ところで、インドの定款には基本定款と付属定款(Memorandum of AssociationArticles of Association)があります。紹介したように英語自体には多少難がありますが、翻訳は楽しいことにはやはり変わりありません。

永江俊一
翻訳のサムライ